青函トンネル開通(青森)、シロトピア博(姫路)、瀬戸大橋開通、花の万博(大阪)、そして石川国体など大きなイベントのバッジやキーホルダー、ネクタイピンに刻まれたシンボルマーク。その金型は加賀彫金の金沂秀さんの仕事だ。
仕事の用途に合ったタガネ作りから始まる。焼きを入れて固くした鋼をグラインダーにかけ石で研ぎ澄ましていく。薄刃ほど切れ味がよくなるが、もろくなりやすい。さらにコンパスの針先でデザインを鋼に刻み込み、その線に沿ってタガネを打ち込む。
その道に入って二十二年。真っすぐ、同じ幅、一定の深さに線を刻むことだけで5年間かかった。左手の人差し指と親指でタガネを挟み、消しゴムほどの小さな頭をした金づちでたたいていく。微妙な振動を感じるために手袋はしない。今では縦、横三ミリ角の中に"MADE IN JAPAN"の十一文字打ち込める精密さだ。
金さんが作った金型は意外なところでも使われている。例えば竹細工風の合成樹脂製のザル。局面を多用し竹が編まれた感じは機械では出ない。また、ビデオテープ、家庭用テレビゲーム機のカセット、自動車のホイールカバー、スポーツウェアなどにつく製造会社のロゴマークも。
『自分の作品が皆さんの生活に役立っているという手ごたえは十分。ただ、一生に一度は、この世に一つしかない、後世まで残る作品を作ってみたい』と話す
以上
(*代表挨拶の画像は、その記事より掲載しました)